第2章「Ⅱ薬の働く仕組み」1)薬の生体内運命
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「Ⅱ薬の働く仕組み」からは概ね3問、内2問が1)薬の生体内運命から出題されます。
総論からはH25年までは1問出題されることもありましたが、H27年からはパタッと出題されていません。とりあえず過去3回以上出題されているポイントは押さえておきましょう。
<総論>
第2項(過去4回出題)
内服した医薬品が全身作用を現わすまでには、消化管からの吸収、代謝と作用部位への分布という過程を経るため、ある程度の時間が必要であるのに対し、局所作用は医薬品の適用部位が作用部位である場合が多いため、反応は比較的速やかに現れる。 |
医薬品の全身作用は、局所作用と比較して短時間で作用を現す。(H21) |
局所作用は、医薬品の適用部位が作用部位である場合が多く、全身作用に比べ、作用が現われるまでにはある程度の時間を要する。(H22) |
局所作用は、医薬品の適用部位が作用部位である場合が多く、比較的速やかに反応が現れる。(H23) |
内服した医薬品が全身作用を現わすまでには、ある程度の時間が必要であるのに対し、局所作用は医薬品の適用部位が作用部位である場合が多いため、反応は比較的速やかに現れる。(H26) |
作用発現までの時間についてです。
局所作用は比較的早く、全身作用はある程度の時間が必要です。
ちなみに、一般的な頭痛薬などは服用してから効き始めるまで「およそ1時間」と覚えておくと、店頭でお客様への説明の際に役立ちますよ。
第3項
内服薬は全身作用を示すものが多いが、膨潤性下剤や生菌製剤等のように、有効成分が消化管内で作用するものもあり、その場合に現れる作用は局所作用である。 |
内服薬であっても、膨潤性下剤、生菌製剤等のように、有効成分が消化管内で作用する局所作用のものある。(H21) |
内服薬は、有効成分が消化管で吸収された後、循環血液中に入って薬効をもたらす全身作用のものが多い。(H22) |
内服薬には、有効成分が消化管で吸収された後、循環血液中に入って薬効をもたらす全身作用のものしかなく、局所作用を目的にしているものはない。(H25) |
膨潤性下剤(主に大腸で水分を保持して膨らむ性質を利用した下剤)や生菌製剤(ビオフェルミンとか)、制酸剤(胃酸を中和する胃薬)など消化管に作用する一部の内服薬では、有効成分が直接消化管内で作用発現するものがあります。
第4項
外用薬の場合、適用部位に対する局所的な効果を目的としていることが多い。また、坐剤、経皮吸収製剤等では、適用部位から吸収された有効成分が、循環血液中に移行して全身作用を示すことを目的として設計されたものも存在する。 |
坐剤、経皮吸収製剤等のように、内服以外の経路から薬が吸収され、全身作用をもたらすものが存在する。(H22) |
すべての外用薬は、適用部位に対する局所的な効果を目的としている。(H23) |
外用薬には、適用部位に対する局所的な効果を目的にしているものしかない。(H25) |
解熱用の坐剤を思い浮かべてみましょう。坐剤はもちろん外用剤ですが、有効成分が循環血液中に入り「解熱」という全身作用が現れますよね。
第5項
局所作用を目的とする医薬品によって全身性の副作用が生じたり、逆に、全身作用を目的とする医薬品で局所的な副作用が生じることもある。 |
全身作用を目的とする医薬品によって局所的な副作用を生じることがある。(H22) |
全身作用を目的とする医薬品では、局所的な副作用を生じることはない。(H23) |
局所作用を目的としている医薬品によって全身性の副作用を生じることはない。(H25) |
副作用について「これはない!」といえるものは何もない。と覚えておきましょう。
アスピリン喘息は、非ステロイド性解熱鎮痛成分の摂取によって喘息症状が誘発される副作用ですが、シップ薬の使用でも起こることがあります。
1)薬の生体内運命(たぶん2問は出題されるでしょう)
(a)有効成分の吸収
第9項(過去7回出題)超頻出問題です!!
錠剤、カプセル剤等の固形剤の場合、消化管で吸収される前に、錠剤等が消化管内で崩壊して、有効成分が溶け出さなければならないが、腸溶性製剤のような特殊なものを除き、胃で有効成分が溶出するものが大部分である。 |
固形剤(錠剤、カプセル剤など)では、消化管で吸収がなされる前に、錠剤等が崩壊して有効成分が溶け出さなければならない。(H21) |
内服薬は、腸溶性製剤のような特殊なものを除き、多くの場合、胃で有効成分が溶出し、吸収は、主として小腸でなされる。(H22) |
錠剤、カプセル剤等の固形剤では、消化管で吸収がなされる前に、錠剤等が崩壊して有効成分が溶け出さなければならないが、多くの場合、腸で有効成分が溶出する。(H23) |
錠剤、カプセル剤等の固形剤は、消化管で吸収がなされる前に、崩壊して有効成分が溶け出さなければならない。(H24) |
内服薬のうち、錠剤、カプセル剤等の固形剤は、腸溶性製剤のような特殊なものを除き、胃で有効成分が溶出するものが大部分である。(H26) |
内服薬である錠剤、カプセル剤は腸で有効成分が溶出するものが大部分である。(H28) |
錠剤、カプセル剤等の固形剤の場合、消化管で吸収される前に、錠剤等が消化管内で崩壊して、有効成分が溶け出さなければならないが、腸溶性製剤のような特殊なものを除き、肝臓で有効成分が溶出するものが大部分である。(H29) |
胃酸は強酸なので、だいたいのものは胃で溶け出すと覚えておきましょう。
ほとんどの腸溶性の製剤は、酸性下では溶出せず、小腸のアルカリ性下で溶出するように設計されています。
H29年の「肝臓で有効成分が溶出する」という設問は少し???という感じですが、引っかからないようにしましょう。
第11項
有効成分は主に小腸で吸収される。 |
内服薬は、腸溶性製剤のような特殊なものを除き、多くの場合、胃で有効成分が溶出し、吸収は、主として小腸でなされる。(H22) |
消化管吸収において、医薬品の有効成分の吸収は、主として大腸でなされる。(H25) |
有効成分は、主に大腸で吸収される。(H29) |
医薬品の成分も、食事を消化した栄養分も小腸で吸収されています。
大腸では主に水分の吸収が行われています。
第12項(過去5回出題)
一般に、消化管からの吸収は、消化管が積極的に医薬品成分を取り込むのではなく、濃度の高い方から低い方へ受動的に拡散していく現象である。 |
一般に消化管からの吸収は、消化管が積極的に医薬品の成分を取り込むことにより行われる。(H21,24) |
一般に、消化管からの吸収は、消化管が積極的に医薬品の成分を取り込むのではなく、濃い方から薄い方へ拡散していくことによって消化管にしみ込んでいく現象である。(H23,25) |
一般に、消化管からの吸収は、消化管が積極的に医薬品の成分を取り込むのではなく、濃度が高い方から低い方へ受動的に拡散していく現象である。(H28) |
生体内での物質の移動はほとんどが濃度の高い方から低い方へ拡散する「受動的拡散」タイプです。
※この濃度の高低差のことを「浸透圧」といいます。
第13項(過去6回出題)頻出!
有効成分の吸収量や吸収速度は、消化管内容物や他の医薬品の作用によって影響を受ける。 |
消化管での吸収速度は、消化管の内容物や他の医薬品の作用による影響を受けない。(H21) |
消化管の内容物や他の医薬品の作用によって、有効成分の吸収量や吸収速度は、影響を受けない。(H22) |
消化管での吸収は、消化管の内容物や他の医薬品の作用によって吸収量や吸収速度が影響を受けやすい。(H23) |
消化管での吸収速度は、消化管の内容物や他の医薬品の作用による影響を受けやすい。(H24) |
医薬品成分の消化管からの吸収量や吸収速度は、消化管内容物や他の医薬品の作用による影響を受けない。(H27) |
消化管での吸収量や吸収速度は、消化管内容物や他の医薬品の作用によって影響を受ける。(H28) |
脂分の多い食事だったりすると吸収量に影響したりします。逆に「影響はないとする根拠は?」と聞かれても答えられないですよね。
いろいろな要素の影響があると理解しておけば簡単に正解できます。
第14項
有効成分によっては消化管の粘膜に障害を起こすものもあるため、食事の時間と服用時期との関係が、各医薬品の用法に定められている。 |
医薬品の成分によっては消化管の粘膜に障害を起こすものもあるため、食事と服用の時期の関係について、各医薬品の用法に定められている。(H21,24) |
有効成分によっては消化管の粘膜に障害を起こすものもあるため、食事の時間と服用時期との関係が、各医薬品の用法に定められている。(H29) |
解熱鎮痛薬やいわゆるかぜ薬などは「食後」となっているものがほとんどです。漢方薬は「食前又は食間」となっていることがほとんどです。
第15項
肛門から医薬品を挿入することにより、直腸内で溶解させ、薄い直腸内壁の粘膜から有効成分を吸収させるものである。直腸の粘膜下には静脈が豊富に分布して通っており、有効成分は容易に循環血液中に入るため、内服の場合よりも全身作用が速やかに現れる。 |
直腸からは有効成分は吸収されづらいため、内服の場合よりも全身作用が遅く現れる。(H25) |
坐剤の有効成分は、直腸内壁の粘膜から吸収されるため、内服の場合よりも全身作用が速やかに現れる。(H27) |
坐剤には、肛門から医薬品を挿入することにより、直腸内で溶解させ、薄い直腸内壁の粘膜から有効成分を吸収させることを目的とするものがある。(H29) |
解熱剤の場合で覚えておくといいでしょう。
内服薬を服用してから効果発現まで、およそ1時間かかります。かつ、肝初回通過効果により有効成分が減ってしまいます。
坐剤であれば、吸収も早く直接循環血液中にはいるため、成分量が少なくて早く効く、といえます。(次項参照)
(b)薬の代謝、排泄
第28項(過去4回出題)
消化管で吸収された有効成分は、消化管の毛細血管から血液中へ移行する。その血液は全身循環に入る前に門脈という血管を経由して肝臓を通過するため、吸収された有効成分は、まず肝臓に存在する酵素の働きにより代謝を受けることになる。したがって、全身循環に移行する有効成分の量は、消化管で吸収された量よりも、肝臓で代謝を受けた分だけ少なくなる(これを肝初回通過効果 (first-pass effect) という)。 |
医薬品の成分は、消化管から門脈を経由して肝臓に入り、酵素の働きにより代謝を受けるため、循環血液中に到達する成分の量は、消化管で吸収された量よりも少なくなる。(H21) |
消化管で吸収された医薬品の成分は、循環血流に乗って全身を巡った後、肝臓を通過する際に酵素の働きにより代謝を受ける。(H23) |
消化管で吸収された医薬品の成分は、消化管の毛細血管から血液中へ移行する。その血液は門脈を経由して( a )に入るので、吸収された成分は、循環血流に乗って全身へ巡る前に( a )を通過する際に酵素の働きにより代謝を受けることになる。そのため、循環血液中に到達する医薬品の成分の量は、消化管で吸収された量よりも( b )なる。(H24) |
消化管で吸収された医薬品の有効成分は、血液中に移行し全身循環に入る前に、脾臓を通過 するため、まず脾臓に存在する酵素の働きにより代謝を受けることになる。(H27) |
消化管で吸収されたもの⇒門脈⇒肝臓《代謝》⇒循環血液中という流れです。
これに対し、坐剤は直腸粘膜⇒循環血液中、となる分だけ早く効果発現します。
H27年は肝臓のところを「脾臓」とひっかけ問題でしたね。
第34項(過去4回出題)
腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくい。そのため、医薬品の効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりする。(H27改訂) |
腎臓の機能が低下した状態にある人では、正常の人よりも医薬品の成分が循環血液中に存在する時間が短縮され、効き目が弱くなりやすい。(H23) |
( a )の機能が低下した状態にある人では、正常の人よりも医薬品の成分が循環血液中に存在する時間が( b )、副作用を( c )なる。(H25) |
腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくく、医薬品の効き目が過剰に現れることがある。(H27) |
循環血液中に存在する有効成分の多くは、腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄が遅れるため、血中濃度が下がりやすい。(H28) |
腎機能に関する問題です。腎臓が悪いと医薬品成分が適切に排泄されず、血中濃度がいつまでも維持されてしまいます。そのため、効果が強くなったり、副作用が生じやすくなるということです。しっかり理解しておきたいですね。
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第2章関連リンク======================
Ⅰ 人体の構造と働き(10~13問)
Ⅱ 薬が働く仕組み (3問)
Ⅲ 症状からみた主な副作用(4~6問)
1-3)肝機能障害、4)偽アルドステロン症、5)病気等に対する抵抗力の低下等
3-3)心臓や血圧に現れる副作用、4)排尿機能や尿に現れる副作用、5)感覚器系に現れる副作用